THE INNOCENCE MISSION / WE WALKED IN SONG

LABEL : P-VINE
FORMAT : 日本盤CD
ここ数年ならベル&セバスチャンからビル・ウェルズ・トリオへ、古くはベン・ワットが紡ぐ音色とトレイシー・ソーンの歌声に惹かれ、チェリー・レッドにもちろんクレプスキュールも。そしてキングス・オブ・コンヴィニエンスをきっかけにファイストを愛聴――。そんな貴方に何としてもお薦めしたいのは、このイノセンス・ミッション7枚目のアルバム。アートワークもなんとなく80年代のエルにも通じるノスタルジックな雰囲気。実際結成は82年ころで、あのA&Mからデビューしたのが89年のこと。それは長い年月を経て、ゆっくりと丁寧に濾過されたピュアネス。シンプルな音楽性と宝石のようにきらめく美しいメロディーが、春の柔らかな陽差しのもとに優しく奏でられます。カフェ・アプレミディ・オブ・ジ・イヤーの“アコースティック部門”サニー・サイドは、早くもこのアルバムに決定なのかもしれません。
(2007年3月)
RENATO MOTHA & PATRICIA LOBATO
/ SHABDS PARA A PAZ

LABEL : NRT
FORMAT : 日本盤CD
ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートは、とても良質で洗練されたボサノヴァ・スタイルのデュオ。けれど例えば、“これまでのヘナート・モタ&パトリシア・ロバートのような音楽”を他に挙げようとするならば、それはそんなに難しいことではないように思えます(誤解しないでくださいね、もちろん彼らを大好きです)。けれど本作では、他にちょっと類のない世界を新たに築くことに成功しています。一言でそれを伝えようとするなら、“ブラジル音楽とヨーガの美しき出会い”。彼ら自身が真剣に取り組んできたというヨーガの中で、瞑想中に繰り返し唱える聖句“マントラ”にオリジナルのメロディーをのせ、インドの伝統的な音楽要素を加えるという挑戦。しかもそれを単に“意欲作”として片付けてしまうには、あまりにも高い完成度で。ヘナート・モタ&パトリシア・ロバートが、正真正銘のアーティスト(芸術性意識の高い表現者)であることを証明する、とても崇高なアルバムだと思います。余談になりますが、先日打ち合わせでカフェ・アプレミディにいらしていただいた音楽家・鈴木惣一朗さんも、一曲目から大変に気に入ったご様子でした。
(2007年3月)
GARY MARKS / GATHERING

LABEL : KINDRED SPIRITS
FORMAT : 輸入盤CD
“ケニー・ランキン ・ミーツ・ ボビー・ハッチャーソン”。まずはそう形容したくなるほどにソフト&メロウな歌声とギターの音色、そしてクールなヴィブラフォンの響き。カフェ・アプレミディでこんなことは初めてなんですが、他のレコードを挟まずに二回繰り返してかけています。リピートの際は、ほんの少しヴォリュームを上げて。そうすることで、このアルバムの凄さがより際立ってくるんです。本リイシューを実現させたキンドレッド・スピリッツのレーベル・カラーを踏まえて例えるならば、ベニー・シングスを想わせるまどろむような包容感と、ジミ・テナーが持つギャラクシー&コズミックなヴィジョンが同居する世界。しかも彼らより30年も前にそれをイメージし、こうしたバランスで録音を残している事実に驚くばかり。LPではおそらくA面のラストであろうアルバム・タイトル曲“GATHERING”を境に、ゲイリー・マークスというアーティストのヴェクトルはその方向性をはっきりと指し示します。そうしてアルバムを聴き終えて、一曲目“AUTUMN EYES”からの素晴らしくフォーキーな連なりを再び耳にするとき、歌声と音色のピュアネスに影を潜めていたアシッドでサイケデリックなパートが突如目の前に現れます。さらにはジャザノヴァがこのアルバムをフェイヴァリットに挙げる本当の意味は、現在進行形のセンスで見事に編み上げられた名コンピレイション・シリーズ『SECRET LOVE』と同列で聴き比べてみることで、その理解が深まるように思えてなりません。
(2007年2月)
PEVEN EVERETT / POWER SOUL

LABEL : SOUL HEAVEN RECORDS
FORMAT : 輸入盤CD
間違いなく時代を超えるクラシックとなる“CAN'T DO WITHOUT”。ブラジリアン風味の柔らかなハウス・ビートに心地よく刻まれるエレピ、そしてペヴェン・エヴェレットはあくまでもナチュラルにそのソウルを歌います。スティーヴィー・ワンダー・マナーの新世代メイル・シンガーの作品として、僕にとってはドニー“DO YOU KNOW?”以来の衝撃的な素晴らしさ。2007年4月27日の金曜日から「ムジカノッサ」は青山・FAIでオールナイトのウィークエンド・パーティーとして新たなスタートを切るんですが、この曲のイントロで歓声が上がるようなピースな瞬間も作れたら良いなと本気で思っています。「フリー・ソウル・アンダーグラウンド」では、一瞬メロウな“WORK TO DO”を想わせるこみ上げオーガニック・グルーヴ“THIS JUST IN”をチョイスですね。ジャイルス・ピーターソン、DJスピナ、マスターズ・アット・ワークのルイ・ヴェガ、ダニー・クリヴィットらトップDJもヘヴィー・プレイ中の太鼓判です!
(2007年2月)
STANLEY COWELL / MUSA・ANCESTRAL STREAMS

LABEL : STRATA-EAST / P-VINE
FORMAT : 日本盤CD/紙ジャケット仕様

もしも僕がストイックにコーヒーだけを入れさせてもらえるようなジャズ喫茶のマスターであるならば、お店の看盤にするであろう一枚はアーマッド・ジャマル・トリオの『THE AWAKENING』。
内容の素晴らしさ、大好きなインパルスからのリリースであることや、全曲孤高のサンプリング・ソースであることなど、迷う余地はありません。

そして一方でマスター個人の顔としての真定盤は、スタンリー・カウエルが亡き父に捧げたソロ・ピアノ・アルバム『MUSA』。
“TRYING TO FIND AWAY”収録で、やはりストラタ・イーストからリリースの『REGENERATION』が、メロウ・スピリチュアル・ジャズの新古典として知られていますが、アルバムの完成度という観点からはそれ以上に評価されるべき屈指の名盤だと思っています。
チャールズ・トリヴァーと共に率いたMUSIC INC.のセルフ・カヴァー“ABSCRETIONS”の気高さと、ファーサイドが掛け合わせる形でサンプリングした“EQUIPOISE”と“TRAVELIN' MAN”のスピリチュアリティーに激しく胸打たれます。“EQUIPOISE”は、ビルド・アン・アークのカヴァーも記憶に新しいですよね。
で、お店に集まる常連さんにはそんなウンチク垂れながらも「黙って聴け!」みたいな感じでしょうか(笑)。
オリジナル盤で10年以上聴き続けてきたんですが、そろそろ音質に限界が。新リマスタリングが施されての紙ジャケ限定盤リリースということなので、僕もこの機会にあらためて買い直すことにします。
(2007年2月)
ANTONIO CARLOS JOBIM
/ EM MINAS AO VIVO PIANO E VOZ

LABEL : 東芝EMI
FORMAT : 日本盤CD
あっという間の1月も終わりに差し掛かった平日の夕方、“usen for Cafe Apres-midi”の選曲仲間でもある吉本 宏さんが、久しぶりにカフェ・アプレミディに。
偶然そこへ橋本さんがやって来て、「やあ、ちょうど良かった! ジョビンの曲のカヴァーで、吉本くんの好きなのって何?」と、突然。二人とも、「ああ、あのヴァージョン良いよね」とか、「あの曲はどれも最高だよ」とか言い合ってました。子供みたいな目をして。
どうやらこの春のリリースで、ジョビンにまつわるコンピが数枚控えてるみたいです。今年はジョビン生誕80周年。気運をみんなで高めていきたいですね。

さて、そんな今の気分で特にお薦めなのは、ベスト盤的選曲も魅力のジョビン晩年のライヴ・アルバム。ピアノも歌も慈しむように丁寧だ し、録音状態とオーディエンスとの距離感もとても良いです。そして気が遠くなってしまうような感覚にとらわれる、神がかり的、または呪術的とも言えてしまいそうな瞬間が度々訪れるんです。それは場所がミナスというのも、もしかしたら関係しているのかもしれません。
数ある彼の作品の中でも、何か特別な魅力があるように思えてならない一枚です。
(2007年2月)
CAETANO VELOSO / CAETANO VELOSO

LABEL : BOMBA
FORMAT : 日本盤CD/紙ジャケット仕様

まだカフェ・アプレミディがオープン間もないころ、午前0時をまわるとターンテーブルにはいつもカエターノが。それは終電に急ぐことのないゆるりとしたお客様との、“静寂”という時間と空間の共有でした。愛唱のオリジナル・ソングを中心に、ジョビン・メドレー、マイケル・ジャクソン“BILLIE JEAN”〜ビートルズ“ELEANOR RIGBY”のメドレーに、コール・ポーターのスタンダードも。そしてクライマックスである名曲“SAUDOSISMO”と“ODARA”の連なりに、ひっそりと感涙。紙ジャケ&新マスタリング&歌詞対訳付きで、ついに国内初CD化です。
(2007年1月)
GILBERTO GIL / GIL LUMINOSO VOZ & VIOLAO

LABEL : NRT
FORMAT : 日本盤CD/紙ジャケット仕様

「カエターノ・ヴェローゾがギターを抱えてるアルバムが好きなんですけど、あんなアルバム他にもありませんか?」と、よく訊かれます。けれどジョアン・ジルベルト以外ではなかなか……。けれどこれからは「ありますよ!」と、胸を張って応えます。
これは、カエターノからのメッセージ。
“ジルが録音した中で、最も美しいアルバムの一つだ”
“ジルは神を信じている。僕は、ジルを信じる”
ジルベルト・ジルという存在と、このアルバムを説明する上で、これ以上の言葉は見つからないと思います。
(2007年1月)
V.A. / MR.SCRUFF'S BIG CHILL CLASSICS

LABEL : The Big Chill Recordings
FORMAT : 輸入盤CD

ニンジャ・チューンからの諸作で知られるミスター・スクラフが、野外フェス「THE BIG CHILL」をテーマに選曲。
このリコメンドを読んでくれている熱心な音楽ファンの方には、細かい解説よりも収録アーティストを目にしてもらうほうが、この2枚組CDの魅力が伝わる気がしてならないんです。
DISC [1]:
1.MIKE WESTBROOK
2.THE OUSMANE KOUYATE BAND
3.GARY BARTZ NTU TROOP
4. DENNIS YOST & THE CLASSICS IV
5. JOHNNY HAMMOND
6. PAUL HUNTER
7. NOBUKAZU TAKEMURA
8. EXTENDED SPIRIT
9.TREVA WHATEVA
10. THE IN CROWD
11. GREN BROWN AND KING TUBBY
12. DAWEH CONGO
13. FELA RANSOME KUTI & NIGERIA 70
14. GRADY TATE
DISC[2]:
1. D'ANGELO
2. RICK JAMES
3. SARAH WINTON
4. DOM SALVADOR E ABOLICIANO
5. DONALD BIRD
6. MOACIR SANTOS
7. ODYSSEY
8. VIN LANDERS VS FUDGE FINGAS
9. FINGATHING
10. G LOVE & SPECIAL SAUCE
11. ERNESTO
12. DEYAMPERT
13. HOMELIFE
14. DAS GOLDENE ZEITALTER
このヴァラエティーでこのタフな流れ、まさに痛快です! 特に、ディアンジェロによる“EVERYBODY LOVES THE SUNSHINE”(ランプ、リイシューされましたね!)でスタートする2枚目を、プライヴェイトな時間に愛聴しております。お馴染みのキャラクターも、テントでまったりしてて可愛い。
(2007年1月)
THE SISTERS LOVE / GIVE ME YOUR LOVE

LABEL : SOUL JAZZ RECORDS
FORMAT : 輸入盤CD

80年代初頭のニューヨーク・アンダーグラウンドから、ロンドンのレア・グルーヴ・ムーヴメント、そして90年代東京のフリー・ソウルへと繋がる屈指のダンス・クラシック“GIVE ME YOUR LOVE”をタイトルに、70年代のA&M〜モータウンに残された貴重な7インチ音源をコンパイル。リリースは少し前なんですが、2006年のリイシュー・オブ・ジ・イヤーに選出ということで。昨年も多くの素晴らしいレコードの再発に恵まれましたが、信頼のソウル・ジャズ・レコーズによる、またもやナイスなジョブに敬意を表します。“YOU'VE GOT MY MIND”が気分で、“BLACKBIRD”も嬉しい収録。英文のライナー・ノーツも資料として充実してるし、キュートなジャケットのデザインも好き。
(2007年1月)
DON BETO / NOSSA IMAGINACAO

LABEL : SOM LIVRE
FORMAT : 輸入盤CD

僕らのカリスマスター、カフェ・ヴィヴモン・ディモンシュの堀内さんが主催するパーティー“テルサ”に、レギュラーDJとして参加させていただいてます。11月のイヴェント終了時、朝を迎えたフロアで、「中ちゃん、これ持ってる?」。手渡されたのは、ドン・ベトの『NOSSA IMAGINACAO』。さらに、「差し上げますよ。これが、“テルサ”を始めるきっかけになったレコードなんですよ」と、あの笑顔で。本当に、嬉しかったです。内容は、まさに“ブラジリアン・フリー・ソウル”と呼ぶに相応しい素晴らしさ! きらびやかなストリングスとホーン・アレンジ、こみ上げるメロディーとギター・カッティングに、女声コーラスもばっちり。これを聴いて、“テルサ”に集合です!
(2006年12月)
GEORGIE FAME / SEVENTH SON

LABEL : CBS / SONY
FORMAT : 日本盤CD/紙ジャケット仕様
“フリー・ソウル・アンダーグラウンド”で、ロックンロール〜モッド魂が沸点に達する瞬間と言えば、山下洋さんがジョージィ・フェイムの“SOMEBODY STOLE MY THUNDER”をかけるとき。お客さん時代から数えて10年、拳をこの曲で握りしめ続けています(笑)。ブロッサム・ディアリーからの“SWEET GEORGIE FAME”へのアンサー・ワルツ“BLOSSOM”も素敵。CBS時代のアルバムなので、コンピレイション『GEORGIE FAME FOR CAFE APRES-MIDI』と音源はかぶってませんよ。先月ご紹介した『RHYTHM AND BLUES AT THE FLAMINGO』と同じく、こちらも世界初CD化で、完全限定生産だそうです。
(2006年12月)
V.A. / HAPPY BIRTHDAY

LABEL :
FORMAT : 日本盤CD

中島ノブユキさんによる“HAPPY BIRTHDAY”をBar Bossaで聴いていて、ふと思い出したことがあります。それはまだ、オアシスの“WHATEVER”をひたすら一曲リピートで一日中聴いていた頃のこと。ポール・マッカートニーの“WONDERFUL CHRISTMAS TIME”を馴染みの古着屋さんで初めて耳にした僕は、「クリスマス・ソングでなければ、毎日でもずっと聴いていたいのに!」と。お店のお姉さんは笑ってました。このヴァージョン、それくらい好きかもです。やっぱり中島さん、すごい。深い海の底から、太陽の光に導かれるままに水面を見上げているかのような感覚。ため息が出るほどの美しい音像、その透明感。カフェ・アプレミディでのバースデイ・ソングは、オルガン・ソロからサンバになる、ZE MARIA SEU ORGAO E SEU CONJUNTOの“PARABENS”が定番なんですが、これからは深い時間にこちらをチョイスします。
(2006年12月)
LUIZ ECA / PIANO E CORDAS

LABEL :
FORMAT : 日本盤CD/紙ジャケ仕様

タンバ・トリオ、タンバ4を率いたルイス・エサが70年にエレンコから発表したブラジリアン・インストゥルメンタルの名盤が、紙ジャケで世界初CD化。10年以上前だったら、ピアノとストリングスでドラマティックに描かれるこのアルバムを、うっかりスルーしていたかもしれません。けどジョビンの諸作品や、オズマール・ミリートの『VIAGEM』を繰り返し丁寧に聴き込んで、中島ノブユキさんという素晴らしい音楽家に出会えた今だからこそ、とてもしっくり来るんです。こういう音楽で、アルバム通して内容が良い作品って、本当に少ないですよね。
(2006年12月)
KENNY RANKIN / SILVER MORNING

LABEL : RMP
FORMAT : 輸入盤CD

「usen for Cafe Apres-midi」の選曲のために、長らく自宅に持って帰ってしまっていたこのアルバム、最近またお店でかけてます。きっかけは先日の来日公演でした。数日前から、前回のブルーノート東京でのライヴの記憶が強く蘇ってきて、その胸の高鳴りたるやどうしようもなく、とにかくひたすら聴いてました。“HAVEN'T WE MET”収録の名盤にして、カフェ・アプレミディの定番としてよく知られてますよね。けど“SILVER MORNING”から続く2曲目“BLACKBIRD”で、お客さまから「この曲誰ですか?」って、本当によく訊かれます。中にはオリジナルがビートルズの名曲であることを知らない方も。11月19日でカフェ・アプレミディは、オープンからまる7年経ったんですが、お客さまもまた新しい世代が増えているんだなぁと、あらためて実感しています。ライヴの方はというと、またもや素晴らしいステージ! その内容については、前回のジョアンのリコメンドに続いて長くなってしまいそうなので(笑)、近日スタート予定の僕のサイトのダイアリーにてお話したいと思います。ちなみにこのCDは、どうやら自主プレスの貴重盤みたいで、現状数に限りがあるようなのでお早めに。ボーナス・トラックとして、当時の7インチ・オンリー“WHY DO FOOLS FALL IN LOVE”も収録。こちらも名曲!
(2006年11月)
GEORGIE FAME / RHYTHM AND BLUES AT THE FLAMINGO

LABEL : UNVERSAL
FORMAT : 日本盤CD
紙ジャケット仕様・限定盤

モダーンズのみならず、全音楽ファン必聴のライヴ・アルバムが遂に世界初CD化! しかも64年のEP『Rhythm And Blue Beat』の全曲ほか、貴重な音源をボーナス・トラックとしてなんと10曲も追加! はっきり言ってこれは事件です。ピーター・バラカンさんいわく、“60年代のビート・グループたちを通じてぼくの世代はアメリカのブラック・ミュージックに出会う機会を得ましたが、その中で最も解釈がヒップで選曲のセンスも優れていたのはジョージー・フェイムでした。傑作『フェイム・アット・ラスト』を筆頭に、この初期の作品がようやくCD化されるのは快挙!”と。ありがたい、リアルタイム世代のお言葉ですね。ソウル、ブルース、ジャズ、ラテン、スカ(ブルー・ビート)が完璧なバランスでブレンドされる様に、当時の“粋”を強く感じます。コンピレイション『GEORGIE
FAME FOR CAFE APRES-MIDI』と共に、ぜひ一家に一枚! 最近、僕のモッド魂が、またスウィングし始めています。
(2006年11月)
JOAO GILBERTO / IN TOKYO

LABEL : UNIVERSAL
FORMAT : 日本盤CD

2003年9月12日の国際フォーラムでのジョアン・ジルベルト初来日公演は、奇跡的に素晴らしかったと感じていました。あのときジョアンは演奏の手を休めて泣いていて、僕の席からでも涙がこぼれ落ちていくのがはっきりと見えたんです。その真意をきちんと理解することはできていなかったんですが、とにかくあの体験は「一生の想い出」と言い切ってしまえるほどのものでした。そうして年が代わったある日、『Joao Gilberto In Tokyo』はリリースされました。その日のカフェ・アプレミディは午後のバタバタを抜け、ふと気付くとゲストは一人もいなくて、僕はフロアで一人ぼっち。思い出して、さっきセレソンで買ってきたCDをプレイヤーにセットしライナーノーツを開くと、「親愛なる日本のみなさんから頂いた優しさに、心からの感謝を捧げます。アリガトウ、ジャパン、アリガトウ」 ── 。そんなジョアンからの慈しむようなメッセージと、このライヴ録音盤が生まれるまでのエピソードは、あの日の感動と記憶をより鮮明なものにしてくれました。僕は、涙をどうしても押さえることができませんでした。そうして4曲目の“コルコヴァード”を終えるころ、長身に少しタイトな黒いスカートが印象的な美しい女性がいらっしゃいました。彼女は、スピーカーから離れたエントランス奥のソファに身を委ねて、シャンパンを注文。僕はグラスをサーヴすると、うっかり泣いてしまっていることを彼女に悟られまいと、しばらくカウンターにこもってジョアンの演奏にからだを揺らし続けました。彼女も、じっと聴いているようでした。結局、再生を終えるまで、お客さまは彼女だけ。僕が次のレコードをセットすると彼女は席を立ち、「今かかっていた音楽を、教えていただけますか?」と。そして、「素敵なお店ですね、また来ます」。笑顔で店を後にして行かれました。小一時間もの間お客さまが一人だけなんて状態で、こんなこと言うのは不謹慎かもしれないけれど、僕にとってもそれは「素敵なお店」でした。以来、彼女にはお逢いできていないのだけれど、もしかしたら僕がいない時間に来てくれてるのかもなんて、勝手に思ってしまっています。とにかく、僕にとってこのアルバムはとても想い出深いもので、そんな個人的な感情も含めて強く推薦させていただきます。今回の来日公演最終日前日、このコーナーでジョアンの作品を紹介すると決めてから当日のライヴを聴き終えるまでの間に、お話したいことがまたいくつかできてしまったんですが、それはまたの機会に。長くなってごめんなさい。
(2006年11月)
V.A. / TRES PRESENTS SHIPPING AND HANDLING

LABEL : TRES / P-VINE
FORMAT : 日本盤CD/2枚組

リリースは少し前なんですが、最近のDJプレイ時における問い合わせ率があまりにハイ・アヴェレイジなので(男子のみですが……)、ご紹介させていただきます。信頼のインディペンデント・ヒップホップ・レーベル、トレス・レコーズから送り出された12インチの中から各アーティストのアルバムに未収録の楽曲にスポットを当てたコンピレイションで、セス・ワン、ジャイアント・パンダらの強力なトラックを惜し気もなく収録。ムジカノッサ的にプッシュなのは、ケ二ー・ドープやトライブ・コールド・クエストも使用したミニィ・リパートン“Inside My Love”のループにファットなベース・ラインが印象的なライトへディッドの“Surprise Cypher II”と、12インチでのリリース時にこれでもかとプレイしたヘッドノディック(クラウン・シティ・ロッカーズのベーシスト)の“ The Drive”。嗚呼、メロウ・マッドネスです!
(2006年11月)
V.A. / FOR J.C. - LOVE IS SUPREME

LABEL : FREE SPIRITS / P-VINE
FORMAT : 日本盤CD

ここ2か月の間、「キンドレッド・スピリッツの新しい10インチ買った? 2年前のビルド・アン・アークのアルバムの興奮再びって感じでさ!」なんて話を友達に会う度にしてた気がします。偉大なるジョン・コルトレーンの生誕80周年を祝うコンピレイションが、今最も信頼できるレーベルからリリース。ドゥワイト・トリブルらビルド・アン・アークのメンバーによる新録の楽曲を目玉に、4ヒーロー、ファラオ・サンダース、クリフォード・ジョーダン、カーリン・ クローグ、そして先日惜しくも亡くなったルーファス・ハーレイ等によるコルトレーン・カヴァー/トリビュート曲収録で、おなじみのマシーンによるアートワークも完璧。こうした時代の空気をリアルタイムで体験できていることに、とても喜びを感じています。話は10インチに戻りますが、本盤には未収録のアビー・リンカーンのカヴァー“WHOLLY EARTH”もぜひ聴いてみてください。あまりにも美しいワルツで、そのスピリチュアリティーが胸にこみ上げてきます。
(2006年10月)
RAMSEY LEWIS / MAIDEN VOYAGE

LABEL : CADET / UNIVERSAL
FORMAT : 日本盤CD

前々回のこのコーナーで紹介させていただいた、ミニィ・リパートンの『COME TO MY GARDEN』を気に入ってもらえたなら、次は姉妹盤と言えるこのアルバムを。プロデュースはやはりチャールズ・ステップ二ーで、彼のペンによる“LES FLEUR”のファースト・ヴァージョンの素晴らしさといったら、それはそれは言葉になりません。ミニィのアルバムでは、1曲目でしたね。もちろん、ハービー・ハンコックの“MAIDEN VOYAGE”にも感極まります。ずっと前にDJで、このアルバムからアレサ・フランクリンのカヴァー“SINCE YOU'VE BEEN GONE”をかけてたら、大好きな「BLUE BEAT BOP!」の山名昇さんが「イェー!」ってDJブースに来てくれたことがあって、あの瞬間は本当に嬉しかったです。最近のカフェ・アプレミディでは後のアルバムで69年録音の『ANOTHER VOYGE』も、クラブDJではやはり69年録音『THE PIANO PLAYER』の“THE DISTANT DREAMER”もよくかけてます。ラムゼイ・ルイスとステップ二ーで、レーベルはカデット。良くないワケがないんです。
(2006年10月)
KOOP / KOOP ISLANDS

LABEL : VILAGE AGAIN
FORMAT : 日本盤CD

結果的に、21世紀の北欧クラブ・ジャズ・シーンの夜明けを告げることとなった衝撃の『WALTZ FOR KOOP』から早4年半。本当に待ちに待ったニュー・アルバム。1930〜50年代のオールド・ジャズからの影響を色濃く反映させながらも、さすがのクープ節は健在。“SUMMER SUN”の続編で、やはりユキミ・ナガノが歌う“I SEE A DIFFERENT YOU”に、モータウン・ミーツ・スウィング・ジャズな“COME TO ME”、歌い方までザ・スミス〜モリッシーな“LET'S ELOPE”など、全曲シングル・カットOKな名曲揃いで、カフェ・アプレミディでもヘヴィー・ローテイション。DJでは、コーラスがノヴィ・シンガーズっぽい“THE MOONBOUNCE”をプレイ中ですよ。
(2006年10月)
PHAROAH SANDERS / LOVE IN US ALL

LABEL : IMPULSE! / UNIVERSAL
FORMAT : 日本盤CD

僕たち世代にはCALMが、そして古くはヤン富田さんが、名手セシル・マクビーによる“LOVE IS EVERYWHERE”のベース・リフを教えてくれました。“永遠に続いて欲しい”と本気で思ってしまえるほどのあまりにも素晴らしいメロディーから、激しく、濃密なインタープレイによる音の洪水へ。けれど最初に耳にしたのは、インパルス期のファラオ・サンダースのベスト盤で、しばらくしてようやくオリジナル・アルバムを手に入れました。そして、本当に泣いてしまったんです。何故なら“LOVE IS EVERYWHERE”が、本来は19分52秒に及ぶ大作であることを僕は知らなかったから。ベスト盤に収録されていたのは冒頭にあたる前述のパートのみで、辿り着くべきはジョー・ボナーのリリカルなピアノに導かれる、美しいバラードとしての“愛の讃歌”でした。そしてさらに告白してしまうなら、ジョン・コルトレーンへ宛てた“TO JOHN”を、未だちゃんと理解するには到っていないんです。まだまだこのアルバムとの付き合いは、永くなりそうですね。
(2006年10月)
MINNIE RIPERTON / COME TO MY GARDEN

LABEL : GRT / AIR MAIL ARCHIVE
FORMAT : 日本盤CD
紙ジャケット仕様・完全限定盤

こんなに素晴らしく胸を打つ作品って、本当になかなかないと思います。このアルバムに出会ってもう何年も経つけれど、いつ聴いても常に新しく感じてしまっています。小西さんいわく、「ミニィ・リパートンもチャールズ・ステップ二ーも若くして世を去った。聴けば聴くほど自分の才能の貧しさを思い知らせてくれる、甘く残酷な音楽だ」と……。この度、めでたく紙ジャケでの日本盤リリースですよ。
(2006年9月)
中島ノブユキ / エテパルマ

LABEL : EWE
FORMAT : 日本盤CD

昼間は僕がカフェ・アプレミディで。夜は名店「BAR BOSSA」のマスター林さんが。もしかしたらこの2か月の間、渋谷で最も思いを持ってかけられたCDなのかもしれません。室内楽とも言え、ジャズとも言え、ボサノヴァとも言えるのに、そのどれとも違う音楽。それはとても穏やかな音色で、美しく、モダンに響きます。一人でも多くの人の耳に届くべき、本当の名盤。
(2006年9月)